手に汗握るゴールシーン。
競走馬は時速約60kmでゴールを駆け抜けます。
勝敗の差は1000分の1秒単位となることも多く、ゴールの瞬間を正確に捉えることは公平確保の上で非常に重要です。
このサムネイルの画像は、2008年のオークス(優駿牝馬)の決勝写真です。
この競走では手前にいるウオッカが2cm差で勝利しました。
数cmの差で賞金も馬券も人生も大きく変わるため、ゴール判定には細心の注意が払われています。
そこで一役買っているのが超高感度CCDラインセンサを搭載したカメラです。
この記事では
- 写真判定に使われているカメラ
- 着順判定の仕方
- 誤審疑惑騒動
について解説します。
写真判定に使われるカメラはラインセンサー方式のカメラが採用されている。
センサーを通過する馬を1万分の1〜1万分の2ごとにスキャンしている。
写真判定のカメラや画像編集は、「山口カメラ」が担っている。
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写真判定に使われているカメラ
通常のデジタルカメラは見たまんまの瞬間を四角形で撮影するエリアセンサー方式が採用されています。
一方で競馬の写真判定に使われているカメラにはラインセンサー方式が採用されています。
この方式は幅0.02mのラインセンサーをゴール板の真ん中にある鏡に合わせて、そのセンサーを通過する馬を1/10,000~2/10,000秒ごとにスキャンしています。
そしてスキャンした静止画を時系列で繋ぐことで、デジタルカメラで撮影したような1枚の静止画のように編集しています。
鏡を使ってスキャンすることで、馬が重なってゴールした時もそれぞれの位置が分かるようになっています。
この写真判定のカメラや画像編集は山口シネマが請け負っていて、パトロールビデオの撮影、公式レースタイムや上がり3ハロンの計測も担っています。
ちなみにラインセンサーはコピー機、スキャナーなどにも使われています。
着順判定の仕方
着順判定は3名の審判が行っています。
3名の座る位置によってゴールの瞬間の捉え方が変わらないように、ひな壇のように縦に並んで座っています。
まずは目視で確認した後に着順を紙に書いて読み合わせています。
そして、すべての馬が撮影された写真に入っていることを確認して着順が確定します。
僅差だった場合は写真を使いながら3人で協議して着順を決定します。
誤審疑惑騒動
1972年12月3日に東京競馬場で行われた第22回クモハタ記念で、誤審疑惑が発生しました。
主催者側の判定は審査員の肉眼による判断で1着はタケデンバード、2着はハクホオショウとなりました。
しかし、競馬関係者から誤審ではないかと物言いがつき、写真を見せるように要求しました。
ところが、カメラの故障もしくは電源の入れ忘れと発表されて、着順が覆ることはありませんでした。
この事件は世紀の大誤審としてタケデンバード事件と語り継がれています。
当時は最終的には審判員の肉眼とされていましたが、この事件以降、写真判定による着順決定が義務づけられるようになりました。
また、1986年5月31日に阪神競馬第4レースで誤審が発生しました。
3頭が僅差でゴールして当初枠連4-5と発表しましたが、その後の写真判定により2着馬と3着馬の着順が逆だったことが判明し、当初発表した4-5と修正後の5-5の両方の枠連が的中となりました。
まとめ
競馬の公平確保のため、ラインセンサ方式を活用した最新カメラの導入や3人の審査員による判定が行われています。
様々な歴史を経て今の方式となっています。
写真判定の写真を見るときは写真判定の仕組みやカメラを開発している山口シネマを思い出してくれたら嬉しいです。
歴史を紐解くと競馬が100倍面白くなります。